風に歌う宿 一本のえんぴつ
宿泊日:2020/03/20-21
到着
みんなとのマスツーリングを終え、箱根バイカーズパラダイスで主催のKazzさんともお別れ。
刻一刻と日が落ちる中で意気揚々とカメラを振り回していた結果、「あと10分…」とかぼやくことになったのが後の祭り。
18時に封鎖されてしまった箱根峠を大きく回り込むコースで伊豆高原へ降下開始。
愛車トレーサーが道を照らす長い長い暗がりの峠道を駆け抜けて、伊豆高原にある風に歌う宿「一本のえんぴつ」に到着したのはチェックイン時間を5分ほど過ぎた20時05分でした。
ヘルメットや撮影機材満載のリュックにウエストバッグ、さらに50Lトップケースの中身を抱えてロビーへ。
ホールのソファに腰掛けていたこの宿を切り盛りしている“おばあちゃん”も自分に気付き、こじんまりとしたフロントで小話を交えながら宿泊書類を記入。
フリードリンクなど共通スペースの簡単な利用説明後、お部屋に案内され一人のバイク旅には少しばかり不似合いな重たい荷物を下ろしました。
部屋
三連休初日ということもあり、予算5000円前後で最安値を狙った素泊まりプランは駐車場を眼下に見る山側のお部屋。
内装は洋式で木のぬくもりと手作り感あるスモールデスクが置かれ、1人なら簡単な食事やiPadを広げるには十分な広さ。
痩せっぽちの自分を彩るように、着るとひとまわりマッシブになれるタイチのバイクウェアにはちょっとだけ小さな和風のクローゼットも備え付けてありました。
フカフカのベッドは一人と1台(ヤマヒロ&トレーサー)に対してツインベッド。
「トレーサーのリアシートに誰か居たのだろうか?」と冗談半分、願望半分の”大馬鹿野郎”の妄想はだけは膨らみます(笑)
風呂
お風呂はお手洗い共々お部屋に完備。
いろんなホテルをリゾートバイト(住み込み派遣)として転々としていた頃の懐かしさにひたりながら、さっそく浴槽にお湯を張ろうと待つこと3分。
「お、お湯が出ねぇ…!」
と、焦ったのは自分だけじゃ無いはずで、全宿泊者あつめて会議の話題にできそうです。
※5分後くらいには熱湯が出ました。
また、一度流してからトイレの水が静かに、それでいて止めどなく流れっぱなし(?)だったようなので、水回りはちょっと老朽化が進行中です。。
騒音
街灯も信号もない闇夜の峠道からようやく地に足をつけた時「楽しく疲れたから今夜はよく眠れそうだ…!」を期待に胸を膨らませていたのも束の間。
隣の女子達(何歳までを”女子”とするか定かではないが)が21時を過ぎても大騒ぎ
宿でのデリカシーの無さに内心うんざりしつつも、部屋としては防音性は皆無で騒音レベル的にもしかしなくても宿中に筒抜け。
駄々漏れの声を聞き流しながら一緒に走った”仲間”とSNS上での交流をして過ごし、帰着報告や旅の思い出話も落ち着き始めた23時頃には騒音をよそに自由落下のような眠りに落ちました。
朝食
8時半頃、&Z(アルドノア・ゼロ)の軽快なアラームピッタリに目を覚ます。
昨日のツーリングが楽し過ぎて峠道に関してはおそらくヘルメット内で発狂しっぱなし。
そのため酷使した体は全身バキッバキで起きたときの第一声は「ひぎぃ」(裏声)
まだ、少し眠い目をこすりながら、洗面台で顔を洗って寝巻きがわりに持ち込んだジャージのまま朝食へ。
三連休の中日ということもあり、早い人はすでにチェックアウト準備を進めているのか。
がらんとしたホールには切り盛りしているおばあちゃんと入れ替わりで部屋に戻ったご一家以外は誰もいませんでした。
宿の情報から朝食は軽めのものを用意しているとのことで、この日は食パンとフルーツジュースがセット。
軽い野菜・果物・トースト・カップスープ&ドリンクなど心ばかりの気持ちでおもてなしします。
メニューは変わることがあります。
加えて、おばあちゃんが気分で作ったというお茶碗いっぱいの浅漬け風サラダという簡単な構成。
日勤→夜勤→休みと日替りで変則な生活している普段「朝はコーヒー1杯あれば大丈夫」という自分としてはすごく久々に、すごくマトモな朝食となりました…!
食事中も昨夜の隣の”女の子達”が大騒ぎしてたことを気にかけてくれたらしくなぜか謝られたり、ちゃんと寝れたか心配されたり。
残ったら重症だけど、過ぎてしまえば割と気にしないタイプの自分は周辺のことやこのお宿のことなどを聞いてみたり、その他小話を交えつつコーヒーのお代わりなどなど、朝食中はなにかと世話を焼いてもらってしまっていました。
朝はそう食べないことからサラダやパンのお代わりできなかったけど、「お兄さんその女の子達よりも細いからやっぱり少食なのかなぁ?」と。
少食なのは間違いないが、しれっと知らぬが仏なことを聞いた気がするのでござる。
「小さいなりのおもてなし」
トップケースへ荷物の積み込みのため部屋と駐車場を行ったり来たり。
その様子を見ていたのか、今日は真っ直ぐ帰っちゃうなら「もし、よかったら」ということでこちらも快諾し朝食のサラダを3重の袋に入れて持たせてくれました。
浅漬け風サラダは父母も絶賛でその日の夕飯に家族で美味しく頂きました!
さらに期限切れでお客さんに出せず冷凍にしていたパンについて「お兄さんならどうする?」 と聞かれ「自分ならフレンチトーストですね!」と返したら案の定トップケース行き。
これも約束通りバカの一つ覚えで簡単に調理して頂きました…!
聞いたところ「大きな宿ではない分、ある程度自由に”小さいなりのおもてなし”ができるのが楽しい」とのことで、すごい素敵なことだなぁと心が揺れた。
それでも当日、特に3連休のような繁盛期は忙しく、今はお一人でこの小さな宿を回しているとのこと。
気持ちの余裕と自分の気まぐれで「派遣ですけど、自分とて元ホテルマンですよ」と全身タイチでフルアーマーのバイクウェアをまとったまま少しばかり整理・補充のお手伝い。
フリードリンクエリアの補充がひと段落したタイミングで暖めなおしたドリップのコーヒーを頂き、10時のチェックアウトまで館内を見て回ったりゆっくりとしたり、穏やかな時間を楽しみました…!
(実際のチェックアウト時間はすごーく緩め。昨夜大騒ぎしていたお隣の一組が出てきていなかったみたい。)
出発
出発準備を終え、ノーマルでも堪能的と表されるトレーサーの3気筒エンジンに火を入れた時を同じくして、けたたましい掃除機の音が響き始めた10時半過ぎ。
高級ホテルのような極上の快適さはないけれど、少しアナログで、むしろそれが心地よいというか。
何よりも人の暖かさに触れ、いつもより気持ち穏やかな自分が居た。
恩には恩を、礼には礼を。その上で、配慮はするが、遠慮はしない。
素敵な利他の心を始め、自分の裁量での最大限お持てなしするという、ひとつの“なりたい自分”に重なったおばあちゃんの人としての温かみを感じた宿でした。
ギアを落とし、ブレーキペダルを目一杯踏み込みながら、静かにクラッチを繋いで、、ゆるりと出発。
一人と一台のオートバイが去った、風に歌う宿「一本のえんぴつ」はこの日も予約がいっぱいでした。
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